増原メッセージ:(14)百聞はイメージングに如かずU

「さきがけ」からのご挨拶
sympo0627  「百聞は一見に如かず」と昔からよく言いますが、実験研究者にとってこれほどズシリと心に響く言葉はありません。我々実験屋は、精度を高め、空間分解能、時間分解能をあげ、正確に、迅速に、簡便に測定観察を行って、より自然を直接見たいと努力してきました。光は古来よりこの「一見」を実現する最も身近な技術でしたが、1960年に発明されたレーザーにより、光科学技術による「一見」は素晴らしい発展をもたらしました。吸収、発光、散乱、回折の分光学的測定にはもちろん、歴史の長い光学顕微鏡観察にも革新をもたらしました。光の回折限界を超える近接場顕微鏡、超解像顕微鏡の開発によりナノメーター次元のイメージングも可能になりましたし、時空間の関数として分光データを測定解析し、画像表示するする手法も大いに進みました。今ではあらゆる観察量、測定量がイメージングされるようになってきました。これにより研究者はもとより一般の人々も自然を直観的に理解することが可能となり、まさに「百聞はイメージングに如かず」の時代になりました。このように進化するイメージング技術のシンポジウムを昨年開催しましたところ大変好評を得ましたので、今年も「百聞はイメージングに如かず(第二回)」として開くことにいたしました。
 私が研究総括のさきがけ「光の利用と物質材料・生命機能」プロジェクトと伊藤先生が研究総括を務めるCRESTプロジェクトは、同じ戦略目標 「最先端レーザー等の新しい光を用いた物質材料科学、生命科学など先端科学のイノベーションへの展開」 のもと、2008年に発足しました。国家の戦略重点科学技術分野における光科学技術利用研究を主体的に推進するプロジェクトとして位置付けられていますが、同じ年に文部科学省による光源・計測法等の研究開発等を実施する研究拠点公募型プロジェクトも始まっております。これらが連携することにより、光科学技術の研究開発を大いに進めようというものです。これら光拠点、CRESTの活動を念頭に、本さきがけプロジェクトの役割は光科学技術研究の裾野を広げることにあると考え、研究推進と運営に創意と工夫を凝らしました。「光を使い尽くす研究」、「若い研究者を光に押し出す研究」、「市民を光に引き付ける研究」をキャッチフレーズに、研究推進を図ってきました。このさきがけ研究者40名の研究には、イメージング技術のブレークスルーに繋がるもの、イメージング技術の高い将来性を示すもの、イメージング技術を駆使してこそ成果が得られるものなど、イメージング技術とは切っても切れない成果がたくさん生まれています。
 今回のシンポジウムではCREST,さきがけ両プロジェクトからの発表に加え、光拠点プロジェクトに特別講演をお願いしました。ご快諾いただいた光拠点のプログラムオフィサー加藤義章先生、メンバーのお一人である宗方比呂夫先生に厚く御礼を申し上げます。このシンポジウムを通じて皆様にイメージング技術の現状と将来、光科学技術のもつ高いポテンシャルをご理解いただけるものと考えております。

さきがけ「光の利用と物質材料・生命機能」領域研究総括 増原 宏


(このメッセージはCREST・さきがけ光科学光技術合同シンポジウム「進化する光イメージング技術〜百聞はイメージングに如かずU〜」(2014年6月27日、東大一条会館)の挨拶と同じです)



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