増原メッセージ:(23)「増原夫婦を囲む会」における挨拶

「増原夫婦を囲む会」における挨拶
2015年9月9日
大阪市大横、JR杉本町駅前、「いわし亭」にて

 皆さん今晩は。
 最初にこの夕食会をセットしてくださった坪井泰之先生、お世話いただいた伊都将司、増尾貞弘先生にお礼を申し上げます。研究生活の佳境に入られた還暦近い大教授から、まさに第一線の研究を伺わんとしている新進の若手の先生まで、お忙しい中ここに来てくださった皆様に感謝いたします。加えてアメリカ、ドイツ、台湾からも参加していただいて、国際的な会になり大変うれしく感謝しております。せっかくの機会ですので、三つほど述べさせていただきます。

 まず地元、大阪市大のことです。戦後の理学部系で光化学の研究を始められたのは、気相の田中郁三先生、液相の小泉先生でしたので、大阪市大は光化学研究発祥の地と言えます。その後小泉先生は助教授だった加藤俊二先生らとともに東北大に移られ、メンバーのお一人の又賀f先生は大阪市大に残られましが、その後阪大基礎工に研究室を開設されます。私は東北大の小泉研に修士までおり、博士課程は又賀研に入れてもらいましたので、先輩の先生方から大阪市大のことをよく聞きました。そのご縁があってか又賀研の関係者が大阪市大には沢山おられます。ESRの伊藤公一、工位武治先生、光化学の中島信昭、坪井泰之先生 です。皆様には市大の光化学について一言お伝えし、坪井先生には光化学発祥の地であることを踏まえた大展開をお願いしたいところです。

 次に台湾交通大の私の近況ですが、杉山副教授、岡野助理研究員、ここに参加している柚山助理研究員の4人のスタッフ、今晩出席してくれている村松君を含めた3人のポスドク、博士課程6人、修士7人、学部生インターンシップ3人の陣容です。レーザートラッピングを中心に研究を展開しており、やっと来月に台湾増原研から最初の博士号取得者が出るところまで来ました。今年で7年目の新竹生活ですが、いまなお学内に住んでおりキャンプ生活を続けております。キャンプといってももちろんテント生活ではなく、いつでも戦いに行けるぞというアメリカ軍のキャンプのように、いつでも研究室に行くぞ、Always I am readyという体制にあるという意味で言っております。忙しく元気にサイエンスを楽しんでいます。

 学問論を一つ。2年前から分子科学研究所の運営顧問をしており、研究から運営の問題まで議論をしております。御多分に漏れず国立研究所も大変な状況にありますが、大峰所長の研究構想によれば、分子研の位置づけは動的階層構造の構築とメゾスコピック方法論の開発にあります。後者については、まさに我々がERATOで考え努力した方向で、我々の先見性を示すものと思っております。今晩はこの思いを皆さんと一緒にシェアーしたいと思っています。またここにいる若い人はリーダーシップをもって顕微鏡化学を確立していってほしいと願っています。

 最後に最近感じていることを述べます。もう2年前に古希のお祝いの会を松山でしていただき、現在71歳です。今なお皆様のお蔭で研究者としてもハッピーで、国際会議からの招待も、12月インド、1月インド、3月アメリカ、4月アメリカと続いております。分子科学研究所の運営顧問を務める一方、大学や附置研究所の評価も年2件くらいこなしております。申し上げたいのは私の心境です。無様なことになる前に引退した方がいいかなとも思い、しかしお役に立つ間は働いた方がいいだろうかとも考えます。結論は「こちらからは求めない、リクエストがあればお受けする」と言うことで、「来る者は拒まず、去る者は追わず」の心境であります。これは少し寂しく、しかし好きなことに集中できる幸せな状況であることを意味します。本日は本当にありがとうございました。


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